断念するということ ~書籍「生きるかなしみ」
書籍「生きるかなしみ」に、
可能性を追い続ける社会に対する、
山田太一氏の「断念するということ」という寄稿がある。
全ての人にあてはまるわけではない、
という氏のいつもの素敵な細やかさで前置きしながらも、
あともうひと頑張りすれば、一つ上の学校、職場、医療などを受けられるのに、
頑張らないものは怠け者、変人扱いされてしまう、
というのは少し生きにくいのではないか。
氏のドラマや小説にもそういった人物は出てくる。
医療を受けず死を迎えようとする「早春スケッチブック」の沢田(山崎努)、
友人と引き抜きの可能性があっても、積極的に断念する「ふぞろいの林檎たち 2」の実(柳沢慎吾)、
など。
若者の田舎暮らしなどが認知されてきた現在ではあるが、
競争に乗らないものへ、社会はなんとなく厳しい。
また「やればできる」など、努力の甲斐なく一つ上に行けないものに対するものへも、
社会はやはり厳しい。
ひいてはいじめや自殺の問題とも絡んでしまう。
そういった可能性を追い続けることへの生きづらさを、
氏は示している。
中々そうはいかないが、「断念」してもいいと認めてくれる人がいること、
支えになるんでは。